「GD900D アナログ・ディレイ&ドライブ(2号機)の製作」
ギターダー
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No.28「GD900D アナログ・ディレイ&ドライブ(2号機)の製作」


プリント基板だけ作っておきながらずっと放置してあった基板をいよいよ使います。
以前に製作したGD900Dの改良版です。




■改良点1■

調整用の半固定抵抗器を除去しました。
調整は組み立てた時に1度やれば、あとはいじらないので
固定の抵抗器にして、組み込む際に調整して抵抗値を決定する方式にします。
些細なことですが、オーディオ・パワー・アンプのエミッタ調整用の半固定抵抗器がありますよね。
アンプの修理で経験しているのですが、あれって古くなると接点不良が起こるんです。
つまり不具合の原因に成り得るわけです。

まぁ機器によっては必要な場合もありますので(アンプのエミッタ調整用も必要ですし。)
あえて「半固定抵抗器を使うのは良くない」とまでは言いません。
ただ、必要ない(必要なくなるように出来る)のであれば、それは当然、無い方がよいでしょう。


■改良点2■

電解コンデンサをチップに変更しました。
前回のGD900Dもなるべく電解コンデンサを使わない設計でしたが
どうしても容量の大きな47μFと100μFだけは電解コンデンサを使わざるを得ませんでした。
それを今回チップにしました。

100μFについては耐圧や物理的な大きさの関係で47μFを2個の合成容量にしました。
電解コンデンサの場合は合成容量は電子の移動のバランスが崩れると劣化を早めるというのがありますが
チップであればそもそも弁が無いですし、特に問題はないと判断しております。

あと前回は10μFに積層セラミックを採用したのですが

『メーカーでは製造初期において規格を満たしていることを根拠に10μFとして販売しておりますが
 1000時間で約10%の容量減少となります。』

とのことで10μFが実測で5.5μFしかなかったので、これもチップにしました。


■改良点3■

BBDとクロックドライバ用の電源を定電圧にしました。

これは、松下のMN3205は定格電圧が4V〜9Vなのに対して
Cool audio のV3205SDの定格電圧が4V〜8Vであること(旧タイプのV3205は4V〜9Vでした。)
から考えても、9Vのままで使うのは余裕が無いどころか定格オーバーですのでよろしくないわけです。

そこで前回は単にダイオードだけで7.2Vに電圧降下させていたのですが、
今回はトランジスタを使った定電圧回路で7.5Vにしました。


  ※BBDに対しての電圧降下については
   以前の記事( No.23「BOSS/DM-2 アナログ・ディレイ実験機の製作」) でも詳しく述べております。


■改良点4■

ドライブ(歪み)の回路を改良しました。
これは日々バージョンアップを繰り返しているので、今回もまだ試作品ですね。
ドライブ回路だけ基板が別になっているので簡単に交換出来る仕組みにしようかと。

■改良点5■

あとは基板の形状を変更したことによるネジ留め位置やフットスイッチの位置の微調整により
ケースの穴位置を変更しました。



スイッチの位置や基板の固定用スペーサーの位置には気を使います。
乾電池を使うことを想定する場合は2個のスイッチの間に乾電池が丁度よく収まる幅にしますが
これはアダプター専用にして基板の面積を広く取りましたのでスイッチはなるべく両端にしました。




その時に、ふたをネジ留めする為のタップが切ってある部分が出っ張っているのと
尚且つケースの側面はスラント(斜め)になっているので厄介です。




ケースのメーカーのデータシートに寸法は載っていますが
ケース上面の横幅の測り方が、私が測っているのはR(角のカーブしている部分)の外側までなのに対して
メーカーはRの内側までの寸法で記載しているので、私は自分で実際に測った方が設計し易いです。




緑の枠が本体側のディレイ基板、赤の枠が裏ぶた側のドライブ基板、青の枠がフットスイッチで
特にスイッチと基板が干渉しないようになっているかを入念に確認します。

プリント基板の設計ソフトを使って実際の寸法と同じ比率で描画して確認します。




寸法も入れられるので使おうと思えば機械設計CADとしても使えます。





ドライブ基板はトランジスタ2個の回路から始めて以来、常に改良を重ねていて
「3Tr Drive ver.4」という通算19番目の基板を製作してあったのですが




その後も改良が進んで「3Tr Drive ver.6」と「4Tr Drive ver.2」まで製作しました。
小型化よりも製作の効率を考慮して、一般的な100mm×75mmの基板を2つに切断した大きさにしました。




「3Tr Drive ver.4」と「3Tr Drive ver.6」は部品の配置や基板の大きさが若干異なるだけで
回路的にも定数が4ヵ所ほど違うだけです。

「4Tr Drive ver.2」は文字通りトランジスタを4個使っているのですが
今回はトランジスタ3個でDS-1に近い音の歪みが出せる「3Tr Drive ver.6」の基板を使おうと思います。

「3Tr Drive ver.4」はもう基板の大きさが古いので実験用にします。



さて、ディレイのプリント基板は「電解コンデンサを使わない用」にしてありますが
ドライブ基板はもう既に「電解コンデンサを使う用」で作っちゃってあるのね。

とはいえ、タンタルでも積層セラミックでも基板の穴に足は入るし
穴を開けっぱなしにして裏からチップを取り付けることも可能ですが
穴は塞がないとかっこ悪いので、タンタルか積層セラミックを使おうと思います。

ただ、容量が4.7μFと100μFなんですよ。
4.7μFはともかく100μFという大きな容量のタンタルや積層セラミックは(一般的には)無いので
妥協して容量を下げるか、チップと併用して合成容量にするかですね。
ここは電源のパスコンなので多少は容量を下げても実際の仕様上での問題はありません。
理論上は容量が大きい方が安定しますが
例えばDistortion+は電源のパスコンがタンタルで1μFで、DODの250とYJM308は10μFです。
これらはバイアスの4.5Vに入れてるのと、Distortion+は分圧抵抗が1Mもあるので
流れる電流が超少ないというのはありますが。
一応ブレッドボードで回路を組んで1μFで確認してみてもノイズ等の問題はありませんでした。


ということで、10μFの積層セラミックコンデンサを使おうと思います。
ただし、前回使ったSupertech Electronic 製があまりモノが良くなかったので
もう一度測定してみます。

静電容量は周囲温度によって変動します。
ここではデータシートにおける一般的な測定条件に合わせて室温を25℃にして2本測定します。

1本目、6.42μF (6418nF=6.418μF)




2本目、6.51μF




9Vの電源電圧の平滑用の用途でバイパスコンデンサとして使用するので
片方(1本目)だけしばらく9Vを印加してみたところ、5.95μFになりました。




2本目はそのままもう一度測定して、6.68μF。




これは許容誤差が+80%、−20%のものなのですが
10μFのコンデンサが実測6μF前後ということです。

前にも書きましたが
『メーカーでは製造初期において規格を満たしていることを根拠に10μFとして販売しておりますが
 1000時間で約10%の容量減少となります。』
とのことなので、その影響でしょうか。


個人的にはやはり許容誤差±10%以内の精度が欲しいので
安心と信頼の村田製作所の積層セラミックにします。




Murataのロゴ入り。




さすが村田さん、 10.25μFですよ。これを使います。
余裕があったらパターン面に47μFのチップを実装して並列容量で57μFにします。






ではディレイ基板から製作します。



先にパターン面にチップを実装します。




チップを載せるところのパターンはこのような形にしてあります。




こんな感じですね。
チップを押さえておく手と、はんだゴテを握る手と、はんだを持つ手の3本があればいんですけど(笑
工夫すればなんとかなります。




さぁ抵抗器を取り付けようと思いましたが、調整器具を作らなければなりません。




本来基板の中にある調整機構を外付けにしますのでそれを製作します。




これで調整して抵抗器10本の値が決まります。
TP(テストポイント)は8箇所あります。
合成抵抗によって数通りの近似値から最適な抵抗値を選択出来ようにしてあります。




金属抵抗とカーボン抵抗でどっちにしようか悩みました。




最近の私は価格によるプラシーボ効果の影響は受けたくないという気持ちもありますし
違いは金属抵抗の方が許容誤差が少ないというだけなので、カーボン抵抗を採用することにしました。
最終的に調整して値を決める10本でどうしても精度が必要な個所だけ金属抵抗にします。




先ほどは10μFの積層セラミック・コンデンサについて精度にこだわっていましたが
当初タンタルにしようと思っていた1μFも今後の流通性を考慮して積層セラミックにすることにしました。

1μFの積層セラミックも精度にバラつきがあったので選別します。




難関を突破して選ばれた者たち。




他の細かい容量の積層セラミックの精度は問題ないです。
1μF以上の大きな容量は要確認という感じですかね。


ということで、ディレイ基板はこんな感じになります。
あとは調整しながら抵抗器を取り付けます。






次はドライブ基板を製作します。

先ほども言いましたように、これは電解コンデンサを使う用に設計したプリントパターンなので
穴を埋める為に表に10μFの積層セラミックを載せて、容量を稼ぐ為に裏に47μFのチップを載せます。




こんな感じですね。







ここで朗報です。



良さそうな47μFの積層セラミックを仕入れました。




私の中で安心と信頼の村田製作所製ですが、さすがに容量が大きいので許容誤差が±20%です。
それでもSupertech Electronic 製の+80%、−20%ような誤差のものよりも安定していると思います。




測定します。

実測 52.93μF です。




裏に実装したチップは実測 47.62μF ですから、合成容量で約100μF になります。



47μF の積層セラミックは大きいので寝かせました。




というわけで、こんな感じになりました。




ディレイ基板と




ドライブ基板。




ちなみに本機で全般的に積層セラミックコンデンサを採用しているのは小型だからです。
フィルムコンデンサだと大きさ的に0.1μFくらいが限界ですね。
それ以上の容量だと大きくなってしまうので一般的には電解コンデンサを使うことになります。

なので1μFや10μFの小型の積層セラミックが登場した時には期待したのですが
電解コンデンサに比べて大きさや特性のメリットはあるものの、精度が難しいですね。
しかし近年ではチップが急速に浸透してきまして、市販のエフェクターもチップが主流になってきました。


まぁ個人的には大きな部品がゴロゴロある方が好きなんですけどもね。


そういう意味ではディレイはともかくドライブ基板で積層セラミックを採用しているのは
私の中では妥協です。

とはいえ、それもほとんど見た目の問題なので、試作品や実用としては全然OKですね。




ケースの加工をします。




こんな感じですね。




基板を固定してみます。 スペーサと位置がピッタリです。




おぉ、スイッチもバッチリですねー。




スイッチをもうちょっと左右に移動させられる余裕があることを確認出来ます。
数ミリでも基板の実用面積が広がれば助かるので、次回の参考にします。




こんな感じっすねー。




と思ったら、基板の裏に実装したチップが可変抵抗器と1.6mm干渉してました・・・

なのでナットを入れてスペーサーを2mm高くします。




スペーサーを2mm高くしたことによって、今度はディレイ基板と裏ぶた側のドライブ基板が干渉しますので
ドライブ基板のトランジスタを寝かせます。
裏に実装するチップの位置にも気を遣わなければならないということですね。






ではディレイの調整をします。




まず周波数を観測しながらディレイ・タイムを調節します。
これは今1周期が約150μsの状態です。




次にディレイのかかり具合を調整します。
波形が崩れている状態だとディレイが綺麗にかかりません。




これも波形が崩れているので綺麗にかかりません。




このように上下対象で綺麗な山になるように調整します。




次はノイズの調整です。
これは波形が二重になってしまっている状態で、これだとノイズが出ます。




このように調整します。






配線をします。

ドライブ基板は今後も改良することを考えてコネクターで脱着可能にします。




ドライブ基板側はこうなります。




コネクターで接続します。




ドライブ基板は裏ぶたにネジ留めするつもりでしたが
高さに余裕が無いのと、中でグラつくことも無いのでネジ留めするのはやめました。




配線とコネクターでパンパンですがなんとか裏ぶたも閉まりました。




LEDはディレイが赤でドライブが青です。 動作もバッチリ。




ステッカーを作って・・・




完成!!




もっと調整し易いような基板の改良をしたい箇所はありますけど
音はかなり好みの音が出てます。

ドライブ基板の改良を想定してコネクターによる脱着式にしましたが
改良したいのはどちらかというとディレイの方かもしれません。

まぁ試作品ではありますが、普段使うのに全く問題ないです。
ハードロック、ヘヴィ・メタルあたりならこれだけあればOKです。私は。




だいたいで言うとDS-1とDM-2を1台にした感じですが、DM-2はディレイ・タイムが300msまでしかないので




DS-1とDD-3を1台にした感じですね。




今思えばこの歪みは元々
「少ないトランジスタ(今回は3個)でどこまでDS-1に匹敵する歪みが作れるか」
をテーマに設計してきたので

「トランジスタ3つの回路にしては、良い。」

を目指していたはずですが、いつの間にか普通のエフェクターとして捉えていました。

これで満足しているわけではないので、さらなる改良を続けます。



2018.9.21

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