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No.6「ゲルマニウム・ラジオの製作」
「今更こんなラジオ作っても、つまらない。」と思う人も多いでしょう。
エフェクターとは全然違うものだし、回路も単純過ぎるし。 だけど、もしエフェクターを自分で設計出来るようになりたいと思うのであれば トランジスタ回路の設計を基本から理解することがとても大事だと思うし、 個人的にはこのゲルマニウム・ラジオというものを作って遊んでみることが トランジスタを覚えるのに好都合という風に思えたんです。 何故かというと、ここで登場する「トランジスタを使う目的」というのは 「イヤホンでしか聞けない小さな音をスピーカーで聞けるように大きくしたい。」 という明確なものなので「成功すれば、ちゃんと聞こえる。」ということで やりがいもあるし、結果も分かり易いと思うんです。 (注意:やりがいには個人差があります。) 最初は、私は単にゲルマニウム・ラジオに興味があったから遊びで作ってみただけだったんですけど 色々やってるうちにトランジスタの基本を学ぶのにもってこいだと思ったので、 ここで紹介すると同時に自分でも色々と再確認したり整理したりしようと思いました。 そもそも電子回路って、ただ書籍を読んで「分かったつもり」になってるだけじゃなくて、 自分で実際に組んで試して、「体感すること」が大事だなって思うんです。 「分かったつもり」で済ませてしまうと、たかがトランジスタ1石の基本的な回路でも いざ自分で最初から設計しようと思ったら「あれ・・・?」なんていうこともあると思います。 そう、「定番回路を流用する」だけじゃなく 「最初から自分で設計する」ことが出来るようになることを目的として 具体的、かつ、実用的なものということで、実際に効果を体感しながら実験しましょう。 という(自分勝手な)考え方です。 そして、(私の独断により)その実験にゲルマニウム・ラジオを使うので まずはそれを製作しますよ、ということです。 さて、まずはこれがゲルマニウム・ラジオの回路図です。 単純な回路ですね。 さすがあなたはお目が高い。そう、電源が無いんですこれ。 電源が無くてもラジオが聞けるんですよ。 エコロジーでエコノミーでセコイものです。 回路は本やネットで探せばちょっとずつ違うものが色々と出てきますが 基本的には同じです。 ただ、受信電波の分離が悪い場合の微調整用にコイルにタップを付けたり、 混信を防ぐ為に、アンテナに100pF程度のコンデンサを入れたり 充分に検波が出来れば、検波ダイオードの後にGNDに落としてる0.01μFを省略したり 逆に検波効率を上げる為にダイオードを2本にしたり、 色々あって奥が深いです。 ちなみにアンテナやGNDはビニール線でも構いませんが、受信感度に大きく影響します。 私はGNDは部屋の外の雨戸の戸袋(アルミ製)に落としてます。 アンテナのコードは、電気スタンドのACコードにクルクル巻きつけてます。 電気スタンド(もしくは何らかの電気機器)のプラグがコンセントに差し込んだ状態であれば その電気スタンドのスイッチはONでもOFFでも効果があります。 アンテナはコンセントの片側に繋ぐという方法もありますが (あくまでも片側ですよ。両側に繋ぐとショート、感電します、) 感度が強すぎると1つの放送局しか選局出来なくなったりもしますので 自分の家の環境や電波の状況に合わせて色々と試してみるのが良いでしょう。 さて、使う部品はゲルマニウム・ダイオードとバリコンとイヤホンとコイルくらいです。 0.01μFのコンデンサは回路図には描いたけど、とりあえず無くてもいいかな。 (ウチの場合はあっても無くても同じでしたので、その時の気分次第です。) ゲルマニウム・ダイオードの種類によって音が変りますので 色々試してみると楽しいでしょう。 よく「ゲルマニウム・ダイオードは生産中止で稀少」だとか言われてますが 生産中止の国産品でも型番を指定するとかじゃなければ まだまだ色んな種類のが入手出来るし、海外では現行で生産してます。 バリコンはコンデンサの容量を可変出来るもので、種類も色々あります。 これはAM用の単連ポリバリコンです。(260pF〜30pFまで可変) 端子はどっち向きに接続しても同じです。 本来はこれって接続の向きとか極性とかあるのかなぁ? 裏のトリマーねじで容量の微調整が出来ます。 イヤホンはクリスタル・イヤホンを使いますが、入手が困難のようです。 その代替品としてセラミック・イヤホンというのがありますので、それを使います。 私はよくブレッドボードで頻繁に部品を差し替えて実験をするので プスっと差し込めるようにコードの末端を加工してあります。 ウォークマンなどのオーディオ用のイヤホンやヘッドホンは ダイナミック型とかマグネチック型なので構造が異なる為にゲルマニウム・ラジオでは使えません。 (まぁ一応使ってみたらすごく小さな音で聞こえましたけど。) コイルは磁石の棒が入っているバーアンテナとか 円筒にエナメル線を巻いたもの、並四コイルなど色々あります。 抵抗器みたいな小さなコイルもあって、とりあえずは何でも大丈夫です。 でも製作も簡単なので、ここは是非、自作しましょう。 ゲルマニウム・ラジオの面白いところは、このコイルの自作にあると言ってもいいでしょう。 コイルは線材の巻き数などによってインダクタンスが異なり、 そのインダクタンスによって受信出来る周波数が異なります。 そこでまずAMラジオの周波数ですが 594 kHz NHK1 東京 693 kHz NHK2 東京 810 kHz AFN(旧FEN) 東京 954 kHz TBSラジオ 東京 1134 kHz 文化放送 東京 1242 kHz ニッポン放送 東京 1422 kHz ラジオ日本 横浜 このくらい受信できればいいと思います。 自作コイルでその受信範囲にもっていくには、 ・どのくらいの太さの線材を ・どのくらいの径の筒に ・どのくらいの間隔で ・何回巻けばよいか が重要になってきますが、計算が面倒なので「GRDS」という、 ネットで無料配布されているソフトでちょいちょいと計算します。 AMラジオ用として一般的な260pF〜30pFまで可変するポリバリコンを使うとして インダクタンスが何μHの時に、何kHzを受信するか計算するとこうなります。 ・320μH・・・551.77〜1624.37kHz ・330μH・・・543.35〜1599.57kHz ・340μH・・・535.3 〜1575.87kHz 一般的に330μHのコイルがよく使われています。 で、330μHにするのに0.4mmのポリウレタン銅線(エナメル線)を使うとして 筒の径が何mmの場合に何回巻けばよいかを計算すると(間隔をつめて巻くとします。) ・32mmの場合・・・160回 ・46mmの場合・・・ 97回 ・50mmの場合・・・ 88回 このようになります。細いと巻く回数が増えます。 同じ330μHのコイルでも、何通りもの大きさや巻き数で作れるということです。 なるべく太い方が分離が良くなる(放送局が重ならない)らしいですが、 筒の径と、巻いたコイルの幅が同じくらいが丁度良いとも言われてます。 例えば 0.4mmのポリウレタン銅線を160回巻いたら幅が64mmになりますね。 0.4mmのポリウレタン銅線を97回巻いたら幅が38.8mm。 0.4mmのポリウレタン銅線を88回巻いたら幅が35.2mm。 私は最初、0.45mmというポリウレタン銅線を入手したので、 厚紙を径46mmの筒にして103回巻きました。幅が46.35mmです。 実際は間隔をつめて巻いてもちょっと幅が計算よりオーバーしましたけど。 ちなみに後からもう一つ製作したのがあります。 実際には最初に製作したコイルだと、計算に反して文化放送の受信で上限でした。 そこで、直径32mmで0.4mmのポリウレタン銅線を99回巻いて、169.51μHにしました。 サランラップの芯を使ってます。 今までよりも上の周波数、730.54 〜 2231.83kHzを受信する計算です。 こっちのコイルだと選局の調節がシビアになりますね。 で、普段聞かないような下の周波数に可変域を大幅に占領され・・・ TBSがよく入って、文化放送あたりで限界というような感じは同じようです。 どうやら「文化放送あたりで限界」という感触は 単純にコイルのインダクタンス(巻き数)だけの問題ではなく、 電波の具合など様々な要素が混ざり合ってこういう状況になっているのでしょう。 そこらへんはまぁゲルマだし、あまり深く追求しないでおきます。 (おそらくアンテナを電気スタンドのACコードにクルクル巻きつけていることによって 感度も上がる反面、TBSラジオなどの強い電波ばかりが強調されているのではないかと。) でもコイル色んな径や巻き数で、色々と作りたくなります。 試しにボールペンに巻きつけて小さいのも作ってみました。 2.8μHのコイルで、計算上は5898.67 〜 17365.23 kHzが受信出来ます。 韓国語や中国語っぽい短波放送や、わけの分からない演歌が延々と聞こえてきます。 昔のジャッキー・チェンの映画のBGMの雰囲気です。(知るか!) これはとりあえず板に乗せただけですが、 あとはコイルの両端にビニールコードでGNDとアンテナを繋げばこれで聞けます。 いやー、電源もないのにラジオが聞けるんですから、初めて作った時は感動しました。 短波放送は時間帯によって感度が全く異なりますね。 夜中とかに部屋にこもってですね、スパイが盗聴でもするかのごとく・・・ 「お、敵の電波を受信出来たぞ。」 とか言いながら韓国だか北朝鮮だかのニュースかなんかを聴いてるわけですよ。 まぁ今で言うところの「ネットサーフィン」なんですかね? 自作して電波を受信すると分かると思いますが、ラジオはラジオで楽しいです。 是非、作ってみてください。 さてさて、ここからが本題ですよ! この電源のいらないゲルマニウム・ラジオなんですが イヤホンでしか聞けないわけです。 それもクリスタル・イヤホンのような微弱な電波を振動させる特別なイヤホンです。 スピーカーとか鳴らせないんです。 そりゃーゲルマニウム・ラジオだから、そこが良いんだってのは分かってますよ先生。 だけど、それはそれ。これはこれ。 やっぱりもっと大きな音で聞きたくなるわけですよ。えぇ。 はい。 トランジスタで増幅して音を大きくしてスピーカーを鳴らす。 アンプですよ。トランジスタ・アンプ。 と、いうことでですね やっと、「トランジスタの設計が必要である」というところまで来ました。 次回、トランジスタの設計をゼロからやります。 2009.1.29 |
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