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No.14「エフェクター電源投入時のLEDの初期状態について」
先日ブログにも書いたものですが、もう少し詳しく、そして新たな実験も追加して編集・加筆しました。 BOSSのコンパクトエフェクターについて、前から「何故だろう?」と思っていた現象があり、 いつか検証しようと思っていたのですが、実験してみたところ原因が判明しました。 まずは検証すべく現象の説明から。 私は複数のDS-1を弾き比べて気付いたのですが、DS-1に限った現象ではなく、 BOSSのコンパクトエフェクターには同じ機種でもアダプターをコンセントに差した時に、 「LEDが点灯状態になるもの。」と「LEDが消灯状態になるもの。」の2種類があるのです。 電源投入時、すなわち全て接続した状態でアダプターを差した時に、 左の個体はLEDが点灯し、右の個体はLEDが消灯しています。 この初期状態は個体によって異なるもので、左右の接続順を入れ替えようが、 両方ともLEDをOFFの状態にしてからコンセントを差し直そうが、 アダプターを差した時にLEDが点灯状態のものは毎回点灯状態になり、LEDが消灯状態のものは毎回消灯状態になります。 あくまでも初期状態が異なるだけであり、ペダルを踏めばON / OFFが切り替わりますので使用には差し支えありません。 ただし、使用環境によっては電源投入時には全てOFFもしくは全てONの状態であった方が都合が良い場合もありますよね。 ちなみにTAIWAN製の裏面ラベルは製造時期によって今のところ(2019年10月現在)6種類を確認していますが この2台は裏面のラベルが同じ2012年6月製と2011年10月製でマイナーチェンジもなく同じ作りです。 オペアンプはどちらもNJM3404ALですし 回路も部品も全て同じです。 電子スイッチのフリップフロップ回路の部分を見てみます。 両方ともコンデンサは470pFと220pFが2個ずつ、トランジスタは2SC2458-GRが2個で同じ。 抵抗器のR28〜R33も全く同じです。 この2台は回路も部品も全く同じなのに 「電源投入時にLEDが点灯するかしないか。」という仕様の違いがあるわけです。 この2台の他にも、製造年月にかかわらず「電源投入時にLEDが点灯するかしないか。」の2タイプがあります。 何故だか気になりませんか? また、上記の初期状態の例外として アダプターを差したまま、一旦DCジャックからDCコードを抜いてから再びDCコードを差した場合は両方ともLEDは消灯。 というのと、 入力ジャックは、入力ジャックからシールドを抜いておけば乾電池が消耗しない(=電源が導通しない)という スイッチの役目を果たしているわけですが、 入力ジャックからシールドを抜いた状態で、 先にアダプターを差してから入力ジャックにシールドを差した場合も、両方ともLEDは消灯。 というのがあります。 このDCコードとシールドについては、抜いたら電源が遮断されるので、 初期状態をすっ飛ばして強制的にOFFにした状態からスタートさせているということで理論的にも納得出来ます。 これらは、その状態でアダプターを抜いて再びアダプターを差すと、また左の個体だけLEDが点灯する初期状態になります。 尚、アダプターを抜いてから直ぐに入れ直してしまうとコンデンサの電気が残っていて 完全にアダプターを抜いたことにならないので、コンデンサが放電されるまで数秒待ってから入れ直します。 コンデンサが放電されるまでの時間はアダプターやパワーサプライによって、数秒から十秒以上かかります。 細かいことを言うと、本体からDCプラグを抜いただけの場合はエフェクター内部のコンデンサだけが放電され、 アダプターを抜いた場合はエフェクター内部のコンデンサとアダプター内部のコンデンサの両方が放電されるという違いがあり、 放電が甘いと初期状態も変化してしまうので注意が必要です。 ということで・・・ アダプターをコンセントに差した時に、 「LEDが点灯状態になるもの。」と、 「LEDが消灯状態になるもの。」の、 2種類があるわけですが、 私が所有している18台のDS-1で確認してみても このような個体の差は、日本製か台湾製かの違いで分かれているわけでもなく、製造年月で分かれているわけでもなく、 オペアンプの種類や回路で分かれているわけでもないのです。 同じ回路、同じ部品でも初期状態に違いが生じるのです。 ちなみにうちにあるやつだと、ブラックDS-1(中身は普通の台湾製)の2台と、普通の(オレンジの)DS-1の3台だけが、 アダプターを差した時にLEDが点灯します。 筐体の色を無視すれば、18台中5台がアダプターを差した時にLEDが点灯する個体で、 残りの13台はアダプターを差した時にLEDが点灯しない個体、という割合です。 それは何故か? 何故このような個体の差が生じているのか? アダプターを差した時にLEDが点灯状態のものは毎回点灯状態になり、LEDが消灯状態のものは毎回消灯状態になるということは、 電源を入れてから運で決まるのではなく、どこかに明確な原因(=差異)があるはずです。 このような、電源投入時におけるLEDの点灯・消灯の初期状態の違いが個体差としてあることに気付いている人は ネットでも見かけますし、BOSSの(Rolandの)サイトのQ&Aにも掲載されてますが、 その回答は、「仕様であり、故障ではありません。」という主旨の内容に留まっていて、 具体的な原因や理由は説明されていませんでした。 なので、実験して原因を究明することにしました。 私にとって原因が判明した状態というのは、 アダプターを差した時のLEDの初期状態が点灯か消灯かを自分で自由に設定・変更出来るという状態です。 一応、原理的には 「バイパス音側とエフェクト音側のどちらのトランジスタが先にONするか。」 ということになります。 まず、実験用にDS-1と同じフリップフロップによるスイッチング回路を組みました。 いわゆる電子スイッチの回路です。 同じDS-1でも何通りかマイナーチェンジされているのですが、どの回路でも初期状態の差異は生じます。 GNDのジャンパー線をここに接触させる度にLEDの点灯と消灯が切り替わります。 モーメンタリー・スイッチと同じです。 右側のトランジスタにLEDを接続しているので、 右側のトランジスタがONの時にLEDが点灯し、左側のトランジスタがONの時はLEDは点灯しないということです。 この組んだ回路は アダプターをコンセントに差した時に「LEDが消灯状態になるもの。」(左側が先にONした状態) でした。 どうすればアダプターをコンセントに差した時にLEDが点灯状態になるか (どうすれば右側のトランジスタが先にONするか)を探します。 同じ回路、同じ部品で個体差があるということは、部品の許容誤差が原因だとしか考えられません。 そうすると、コンデンサかトランジスタか抵抗器が怪しいということになります。 (全部じゃん・・・) 可能性が低くて交換しやすいコンデンサとトランジスタからいきましょう。 まずはコンデンサを左右で入れ替えてみましたが、何も変わりませんでした。 電解コンデンサならともかく、 pF程度の小さなセラミックコンデンサじゃ電気を溜める量の差とかそういうのは関係ないでしょう。 次にトランジスタてすが、これも可能性は低いです。 hFE(増幅率)にばらつきがあっても、それはトランジスタがONした後の話だからです。 まぁでも念の為、確認します。 現状では左右ともGRランクのhFE=290?291で揃ってます。 トランジスタは台湾UTC製の2SC1815Lを使ってます。 左右で異なるhFEにしてみたいのですが、 わりと性能の良いトランジスタで数本を測定してもばらつきが無いので、 あえて東芝製YランクのhFE=217にします。 すると、 左側(LEDに繋がっていない側)だけhFEを低くするとアダプターをコンセントに差した時にLEDが点灯状態になりました。 さらに、 ランクがBLとGRなど、両方とも一定以上のhFEがあると、差があっても消灯状態になります。 つまり、 LEDに繋がっていない側のトランジスタのhFEがYランク相当に低い場合のみ、 アダプターをコンセントに差した時にLEDが点灯状態になります。 hFEが高いトランジスタの方が早くONするというのはどうも腑に落ちませんが、 hFEが下がる理由としては単なる許容誤差の他にも劣化もありますし、 hFEが低いということはトランジスタとさしては性能が低いということなので、あり得なくはないか。 念の為、様々な型番のトランジスタで確認しましたが、 やはりLEDに繋がっていない側のトランジスタのhFEがYランク相当に低い場合のみ、 アダプターをコンセントに差した時にLEDが点灯状態になります。 そうすると、 ・左右でhFEが揃っている場合。 ・右側のhFEが低い場合。 ・左側のhFEが低い場合。 の3通りあるとしたら、アダプターを差した時にLEDが点灯状態になる確率は3分の1です。 うちの18台中5台という確率とだいたい合致しているのは偶然でしょうか? (偶然でしょう。) もし、設計上、左右のトランジスタのhFEが揃っているものとして作られているのであれば、 アダプターを差した時にLEDが消灯している状態が本来の設計上の初期状態であると言えると思いますし、 もし、hFEのばらつきを考慮した上での設計ということであれば、特にどちらが本来の初期状態ということはない、 とも言えると思います。 さて、実験回路でトランジスタのhFEを選別することによって 電源投入時にLEDが点灯するか消灯するかを自由に設定することが可能になったので、 今度は実際にBOSSのエフェクターで、この実験の結果の通りにコントロール出来るのかどうかを試してみます。 DS-1は大事なものなのでなるべく手を加えたくないということで、 DS-2がアダプターを差した時にLEDが点灯するタイプだったのでDS-2を実験台にします。 DS-2のトランジスタも先ほどの2台のDS-1と同じ2SC2458-GRが2個です。 これは台湾製が2SC2458-GRで、 日本製のDS-1は2SC536、2SC945、2SC945L、2SC1740、2SC603、2SC1685、など様々です。 まぁただのスイッチングなので音には影響がないですし、何でもいいんですけど 何でもいいわりには一番一般的な2SC1815は絶対に使わないっていうね・・・ で、このDS-2はアダプターを差した時にLEDが点灯するタイプなので片方だけhFEが低いはず。 グヘヘヘヘ!! グヘ・・・あれ? 290と289じゃほぼ同じですね・・・ なんと、 左右を入れ替えても、hFEの揃った2SC1815Lに交換しても、初期状態はLEDが点灯という状態のままです。 既に実際の回路で実証済みのはずなのに、実験の結果と異なる現象が起こってます。 まさかの振り出しに戻ってしまいました。 考えてみれば、GRランクのhFEがYランク相当にまで下がるような許容誤差なんて、 古いオーディオアンプのように余程の熱で劣化しない限りあり得ないでしょう。 まぁ、やはり結局は部品の許容誤差が原因でどちらのトランジスタが先にONするかという話なので 振り出しに戻ったというよりは、順番に確認していった結果、あとは抵抗器しかないということになったのだ と言いたいところ(爆 そうすると、 じゃぁベースとコレクタの56kΩの抵抗器か!! ということになるわけです。 そして・・・ ベース電位の56kΩの抵抗器を左右で入れ替えたら初期状態が入れ替わりました。 コレクタ側の56kΩは入れ替えても変わりませんでしたので、ベースの56kΩを左右で入れ替えるだけです。 DS-2でいうとここのトランジスタの後ろの2本です。 小さいです。1/8Wかな? 許容誤差が±5%の56kΩですので、53.2kΩ〜58.8kΩの範囲内で誤差があるはずです。 左側(LEDが付いてる側)が57.2kΩで、 右側(LEDが付いていない側)が55.8kΩでした。 これを逆向きに取り付けたところ・・・ はい、初期状態が切り替わりました。 LEDが付いてる側のトランジスタのベース電位が高いと、電源投入時にLEDが点灯するということです。 ということで原因は抵抗器でした。 結論。 アダプターをコンセントに差した時に、 「LEDが点灯状態になるもの。」と「LEDが消灯状態になるもの。」の2種類があるのは、 フリップフロップ回路のトランジスタのベースの56kΩの抵抗器の許容誤差によって、 どちらが先にトランジスタがONするかが決まるからであり、 LEDが付いている側のトランジスタのベース電位が高いと、電源投入時にLEDが点灯します。 なので、ベースの56kΩの抵抗器を左右で入れ替えれば、 アダプターをコンセントに差した時に「LEDが点灯状態になるもの。」と「LEDが消灯状態になるもの。」を 変更することが出来る。 ということです。 ここまでの検証は既にブログにも大体書きましたが・・・ 念の為にもう少し確認しておきます。 DS-1はなるべく無駄にハンダを外したり付けたりしたくないのでDS-2で確認しましたが(可哀想なDS-2・・・) 一応、DS-1でも確認しておきましょう。 ただしハンダ付けは外さずに確認します(爆 しかしその前にですね・・・ 気を付けなければいけないことがありまして 実は今のところ(2019年10月現在)私が確認しているBOSS社の正式なDS-1の回路図は3種類ありまして、 マイナーチェンジによって回路とプリントパターンが変更されていて、ちょっとずつ異なっているのです。 1つは昔から出回っている1980年12月26日版の BOSS DS-1 SERVICE NOTES の回路図で、 お馴染みのやつだと思いますが、これは私は「Q9タイプ」と呼んでいてちょっと特別な仕様なのです。 これはLEDを点灯させるのにトランジスタを使っているタイプで、 シリアルナンバーでいうと銀ねじの中でも中期にあたる 8900 〜 9900 だけの仕様なのです。 基板の左上に部品番号「Q9」のトランジスタがあります。 この基板はQ5のトランジスタがLED側なので、R29の56kΩがLED側のトランジスタのベース抵抗になります。 基板には部品番号が表記されていませんがこれです。 Q5の下にあります。 っていうかですね・・・ この特別な仕様の「Q9タイプ」用の回路図しか長らく出回っていなかったということが 様々な混乱を生んでいたと思うんですよね。 だってみんなが持っているDS-1のほとんどが「Q9タイプ」ではないわけですから 回路図と現物が全然違うわけですよ。 まぁそれはそれでいいとして・・・ 次に、台湾製が発売されてだいぶ経ってから、1994年版の SERVICE NOTES が出回り始めました。 それには日本製の回路図と台湾製の回路図の2種類が載っているのですが、まず日本製から。 この日本製の回路図は上記「Q9タイプ」とは別の、日本製の中でも後期の回路図です。 このタイプになります。 黒ねじの日本製で、大雑把に言うと6桁ステッカーシリアルはだいたいこれです。 基板の左上にあった「Q9」のトランジスタが無くなってます。 回路図上のQ4とQ5の位置がさっきと逆になります。 右側の(LED側の)トランジスタがQ4になって、R28の56kΩがLED側のトランジスタのベース抵抗になります。 一番側がR28です。 ややこしいですねー(笑 3種類の回路図のうち3つ目が1994年版の SERVICE NOTES の台湾製の回路図で、「DS-1A」と表記されています。 今回の実験で使ったやつも含めて、表面実装基板になる前の台湾製は、ほぼ全てこれです。 回路図上のQ4とQ5の位置関係は日本製の後期と同じになってますね。 R28の56kΩがLED側のトランジスタのベース抵抗です。 ついでに補足しておきますと・・・ DS-1はマイナーチェンジが多くて厳密に分類すると銀ねじ期だけでも十数種類ありますし この3種類以外にも別の基板があるので、出回っていない回路図も存在していると思います。 例えばシリアルナンバー 8900 〜 9900 の「Q9」タイプより前の 8800 までは 左上に電解コンデンサがあるタイプの基板でした。 これは 8500 です。 ちなみにこれは 7500 ですが、基板自体は8500と同じものです。 最初期の 7100 だとC7の250pFのセラミックコンデンサが基板の裏に手配線される仕様になっています。 そんなこんなで・・・ 今からフリップフロップ回路の「LEDが付いている側」のトランジスタのベース抵抗に細工をするわけですが 「LEDが付いている側」と「LEDが付いていない側」の基板上の抵抗器の配置が製造時期によって異なるので 気を付けなければいけない、というわけです。 これから使うのは台湾製で、これはもともと電源投入時にLEDが点灯するタイプです。 これに細工をして、電源投入時にLEDが消灯しているタイプに変更してみます。 これはLEDが付いている側のトランジスタのベース電位が高いはずなので、 LEDが付いている側のトランジスタの56kΩのベース抵抗と並列に1M〜10MΩをクリップで繋ぐことで 並列合成抵抗にして抵抗値をちょっと下げます。 元が57kΩの場合、 1MΩを並列に繋ぐと 1 ÷ (1/57k + 1/1M) =54.1kΩ になり、 2.2MΩを並列に繋ぐと 1 ÷ (1/57k + 1/2.2M) =55.9kΩ になり、 10MΩを並列に繋ぐと 1 ÷ (1/57k + 1/10M) =56.8kΩ になります。 10MΩで変わらなければ2.2MΩや1MΩに下げていけばいいと思います。 はい、電源投入時にLEDが消灯するタイプに変更出来ました。 ペダルを踏めばONになります。 ということで、電源投入時にLEDが点灯するタイプと消灯するタイプを自由に変更することが可能になりましたので LEDが点灯するタイプと消灯するタイプが混ざっているのが嫌なら揃えることも出来ますし、 複数のエフェクターをエフェクトボードに組んである場合とかだと、 常に使うエフェクターは電源投入時にONになるようにして、コーラスなどたまに使うやつはOFFにしておくなど 自由に設定することが出来ます。 また、切り替えスイッチを付けることも可能ですね。 まぁそこまでやるかどうかは別として(笑 謎の現象の原因が分かってスッキリしました(笑 2019.10.14 |
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